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前回までは外国の話をしていましたが、今回は日本が登場してきます。

5.いいとこどり


イギリスやフランスの革命を経て、市民と呼ばれる人々は、自分たちにあれこれ指図してくる人(権力者)はいったい何をもって私たちに指図する権利を持っているのか、と問うようになります。

絶対王政の頃の考え方は、「王は神からその地位をたまわったのであるから、王は国民に指図する権利がある」というものでしたが、イギリスやフランスではこれを否定しました。「神からもらった地位だろうが、国民の意に反した行動は制限されるのである!」という考え方です。

この考え方を明文化したものが「憲法」と呼ばれるものを形作っていきました。(イギリスには明文化された憲法はありませんが)

つまり、「王といえども「憲法」に則り、政治を行わなければならない」ということです。

ところが、この考えを逆手に取った人々もいました。

代表的なのはドイツです。ドイツは当時、プロイセンという国が統治するドイツ帝国でした。宰相(日本で言えば首相)のビスマルクは、「皇帝が統治をするには「憲法」がいるのか…。なら、憲法に皇帝が統治するって書いちゃえばいいじゃん!」とひらめきました(本当にひらめたいかは知りませんけど)。

こうして出来たのが、「ビスマルク憲法(ドイツ帝国憲法、日本ではプロイセン憲法とも言います)」です。これは皇帝が強い力を持ち、国を統治するという内容です。イギリスやフランスの考え方とは真逆ですが、かたちとしては「憲法」に則っていますよね。

まさに、憲法のいいとこどりをしたわけです。今までは皇帝の権力の源泉は神でした。しかし、時代の流れと共に神で押し切るには無理が出てきたため、今度は「憲法」が権力の源泉となったのです。ここでは民主主義的な行動はあくまで皇帝の慈悲で行われているという認識でした。

そして、このビスマルク流の考え方を真似する国が現れます。そう、それが日本です。

日本の戦前の憲法、「大日本帝国憲法」はプロイセンの憲法を参考にしたと言われています。確かに「天皇」に権力が集中しています(ただし、実際にはそうでもありませんでした。天皇がその気になれば可能だったでしょうが)。

ドイツはその後、ドイツ革命がおこり、皇帝が退位し、共和制になりました。そこでヴァイマル憲法が制定され、英仏流の民主主義が確立しました。権力の源泉は「国民」にあり、それを具体化するシステムを明記したものが「憲法」であると変わったのです。

6.現代の憲法


しかし、ドイツも日本も第二次世界大戦で敗れ、大きな変革を迫られます。

ドイツは当時世界で最も民主的と言われたヴァイマル憲法を持ちながら、ヒトラーを指導者に選び、泥沼の戦争に突入していきました。

つまり、必ずしも民意は「正しい」ものを選ばないということです。これを民主主義の自殺と呼びます。これを変えるためにドイツ人たちは現在の憲法(正確には基本法)を制定しました。民意は基本的に尊重するが、体制を変えるようなことを言うとその意見はつぶすという「戦う民主主義」です。是非が議論されることはあれ、現在のドイツは安定した民主主義を行っています。

一方の日本は、GHQの占領のもと、新たな憲法を制定します。「日本国憲法」です。

しかし、これがドイツと大きな差を生みました。ドイツでは憲法を改正して、自らの手で戦後の国家を作り上げていくという作業を行いました。他方日本は、GHQの要求をのんで憲法をつくり、それを一度も改正していません。よく改正論者が言う「押し付け憲法論」です。

私は、日本国憲法の内容自体は優れたものであると考えています。しかし、日本人の憲法に対する向き合い方には問題があると思います。

イギリスもフランスも、ドイツも、またアメリカも、先進国ではそれぞれの国の国民が自らの考え方を反映し、憲法そしてその根底にある民主主義と向かいあってきたのです。とんでもない失敗も起こしつつ、「良くなる方へ」動いてきた歴史があります。

でも、日本は、戦前も戦後も、一度も国民は民主主義と向かいあってきませんでした。戦前の動きとして、「自由民権運動」や「大正デモクラシー」はありましたが、誰も憲法改正は唱えませんでした。民主主義として問題があるにも関わらず。戦後に至っては、もはや誰も考えていないのではと思います(唯一唱えているのは復古主義者ですかね)。これは日本が歴史上、一度も全国民的に参政権を求めたことが無い(エリート層が求めたことはありますが)ことに起因していると思います。

投票率の低下というのは先進国共通の課題です。しかし、それ以上に、政治ではなく民主主義への無関心が日本人には広まっているように思えます。民主主義とはどうあるべきなのかについての考えが浅すぎるのではないでしょうか。

今回の選挙結果がどう日本の今後を左右するかは分かりませんが、誰が政権を取ろうとも、日本人の民主主義への理解のレベルが上がらない限り、日本は今後何度でも同じ過ちを繰り返すのではないでしょうか。

だから、私は日本人には民主主義が向いていないのではないかと思うのです。いや、むしろ資格が無いのかもしれません。

大丈夫かな、日本……。

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